
前回の記事では、「CLIL(内容言語統合型学習)」の特徴や理論的背景をご紹介しました。
今回はその続編として、実際の授業実践とそこから見えた成果、そして新たな課題に迫ります。
研究のスライドはこちらにPDFとして掲示します。
授業のテーマは「内容 × 言語 × 楽しさ」
私がおこなったCLIL授業では、教科書のトピックを活かしつつ、以下のような内容を扱いました。
- Lesson 1: ブラーノ島のカラフルな家の理由を英語で調べ、SNS投稿風に紹介
- Lesson 5: 歌舞伎の隈取(くまどり)を切り口に、日本文化を英語で説明
- Lesson 8: 自然界のデザインから着想を得た製品を学び、バイオミミクリーの記事を作成
どの授業にも共通して「情報を読み取る→まとめる→自分の言葉で発信する」という流れがあり、生徒が自分の考えを英語で表現する場面が多く設けられました。

とにかく生徒は英語に興味がない!ということがわかったので、とにかく生徒が興味を惹くアウトプットを探し続けて行き着いた先がCLILでした。
数値と実感で見えた“変化”
実施後のアンケートでは、「英語が好き」「どちらかといえば好き」と答えた生徒が全体の2/3まで増加。特に、英語が苦手だった生徒の中に「英語に前向きになった」と回答する姿も見られました。
具体的には:
- 英語が“分かる”から“できそう”へ
- 苦手意識が“無関心”から“難しいけど挑戦したい”へ
また、活動ごとの満足度も高く、特にプレゼンや共同制作などの「自分が参加できる」活動で前向きな姿勢が見られました。

無関心を挑戦してみたい、へと変化させることができたのは大きな成果だと考えています。
グルーピングの難しさと向き合う
一方で課題も明確になりました。特に影響が大きかったのが「グルーピング」の在り方です。
例えば、同じように「英語が苦手」でも、
- 仲間と協力して乗り越えられた生徒(➡ポジティブな変化)
- 関係性に悩み、活動自体が負担になってしまった生徒(➡ネガティブな変化)
ここから得られた学びは、CLILでは「内容」や「言語」だけでなく、学ぶ場の人間関係そのものが学習効果を左右するということです。
CLILを成功させる5つのポイント
今回の実践を通じて、CLILを授業に取り入れる際に特に重要だと感じたのは以下の5点です:
- 活動の前に「足場づくり(スキャフォールディング)」を丁寧に
- 教科書の表現をベースに「模倣→創造」の流れを設計
- 母語の使用も柔軟に取り入れる(理解の促進)
- 協同学習はグループ構成を慎重に
- 課題提出が目的化しないよう「過程の見える化」を意識
CLILは「教える授業」ではなく、「学びを設計する授業」です。生徒の実態に応じた柔軟な設計が、CLILの真価を引き出す鍵となります。
“英語がちょっと好きになった”という成果
今回の実践で感じたのは、「英語ができるようになる」こと以上に、「英語に向き合おうとする姿勢」が育つことの大切さです。
CLILは、学力やスキルだけでなく、意欲や関心という“情意面”の変化にも大きく関わります。
英語嫌いだった生徒が、「できないけど、楽しかった」「なんとなく興味が出てきた」と言ってくれたとき、CLILの価値を実感しました。
これからも、英語と他教科を結びつけながら、“英語を学ぶ意味”を実感できる授業を目指していきたいと思います。

研究から見えてきた成果と課題を、今後もいろんな生徒に還元できたらと考えています。この実践が少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。 See you! 👋
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